この記事は最終更新日から 12年以上が経過しています。
カナダで夏の間のリゾートバイトとして人気なのが“フルーツ・ピッキング”。
「短期間で稼げる!」「自然を満喫できる!」など ざっくりした情報は耳にするものの、実際にピッキングを経験した方の話はなかなか聞かないもの。
そこで今回は 2012年の経験者の方のお話を元にカナダのピッキング情報をお届けします。
場所はバンクーバーから車で約5~6時間、カナダのフルーツ産地としても有名なオカナガン地域(Okanogan)。この地域はワインの一大産地としても人気が高く 何百ものワイナリーが点在します。
フルーツの種類
フルーツはワイナリー用のブドウをはじめ、チェリー、ピーチ、アップル、洋ナシ、プルーンなど様々で、
それぞれ収穫時期が異なるため、ある程度収穫時期を知っておかないとムダ足となってしまうので注意しましょう。
各フルーツの採集時期
|
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
|
チェリー |
|
|
|
|
|
6月中旬 ~ 8月末 |
アプリコット |
|
|
|
|
|
7月中旬 ~ 8月中旬 |
ピーチ、ネクタリン |
|
|
|
|
|
7月中旬 ~ 9月中旬 |
洋ナシ、スイカ |
|
|
|
|
|
8月中旬 ~ 9月中旬 |
プラム、プルーン |
|
|
|
|
|
8月中旬 ~ 9月中旬 |
アップル |
|
|
|
|
|
8月中旬 ~ 10月末 |
ブドウ |
|
|
|
|
|
9月初旬 ~ 10月末 |
- チェリー(中でも “ラピン - Lapine” という品種)が比較的稼ぎやすいため人気
- アップルは比較的重労働の割にチェリー程稼げない
時期
一番稼ぎやすいと言われる “チェリー(ラピン)”の収穫時期を下記に案内します。
チェリーの収穫可能な地域は、オカナガン地域の最南の Osoyoos から始まり、徐々に Oliver、Penticton と北上していきます。
少しでも多くのチェリーを収穫したいピッカーたちは、これに合わせてファームを移動しますが、各地域で収穫可能な時期が重なるため、移動するかギリギリまで残るか判断に迷うことになります。
時期 |
場所 (土地名) |
6月中旬 ~ 7月下旬 |
Osoyoos |
7月上旬 ~ 8月上旬 |
Oliver |
7月上旬 ~ 8月下旬 |
Penticton、Summerland、Naramata |
7月中旬 ~ 9月末 |
Kelowna、Oyama |
- 収穫地域に合わせてファームを移動する場合、車を持っていない人は BC Transit などの公共交通機関を利用することもできる (自転車の積載可)
- オカナガンから車で6時間ほど東にいった町「Creston」のファームは、チェリーも大きく、ボックスあたりの報酬も高いため非常に人気が高く“ピッキングの聖地”とも言われている
滞在場所
ピッキングが始まるまではキャンプサイトや宿泊施設に滞在します。(ホテルはありますが、B&Bやバッパーなどはありません)
ピッキングが始まったらファーム内にテントを張るのが一般的。稀にコンテナに滞在させてくれるファームもあります。
ファームの探し方
収穫時期が近づいたらオカナガン方面へ向かいましょう。
早く行き過ぎると仕事が無く宿泊費がかさみますが、行くのが遅いと仕事にありつけません。
もし仕事にありつけなかった場合は北上して他のファームを探しましょう。
現地到着後は足でファームを見つけ、オーナーに直接交渉します。
どのファームも定員が決まっており、また多くのファームではリピーター(経験者)を採用する事が多いので早い者勝ちとなります。
Okanagan Kootenay Cherry Growers Association
必需品
必須用品
- キャンプ用品
- 農場ではキャンプ生活をする場合がほとんど。中にはコンテナに宿泊させてくれる農場もありますが、特に車を持っていない場合は持参するのが普通です。
- 携帯
- オーナーと交渉した後、連絡は携帯にくれる場合がほとんど。連絡がつかないと信用もされず、仕事のチャンスを逃します。
あると便利なもの
- 車/自転車
-
車があればファームを何軒も回れる上、寝泊まりする場所としても使えるのであるとかなり便利。自転車も有効な移動手段となりますが時間と体力が消耗します。
- バケツ
-
貸してくれる所もあるが、そうでない場合、また様々なファームでの仕事を希望する場合は身体にフィットするピッキング専用のバケツがあると良い。普通の丸バケツだと作業効率も下がる。
- テーピング
- ピッキングをしていると指がすぐに割れるので、持っていた方が良さそうです。手袋はピッキングの感覚が狂うようです。
- ヘッドライト
- テント生活になるので夜は真っ暗。あると何かと便利です。
ピッキング
ピッキングは早朝から日が上がって暑くなるまでの間に行います。雨天は中止。
脚立を使って指定された木/エリアのチェリーを採ります。
チェリーの木はそれ程高くありませんが、きちんと剪定されていないファームでは脚立の置き換えなどで苦労することも。
ポジションが決まったらバケツをお腹に抱え、採ったチェリーを入れていきます。
バケツの8割まで入れるのが丁度良い量とされていますが(果実が潰れない為)、
判断はファーマー次第。他の人と同じ量を採っても、稼げる額が変わってくる場合もあります。
基本ルールとしてチェリーの“buds (つぼみ)”は採ってはいけません。
採ってしまうとそこからは翌年チェリーが生えて来なくなるので厳しくチェックされます。葉や枝も採らない方がベター。
ピッキングの場合の換算は専用のボックス(バケツ 1杯分程度)ごとで、
ファームによっても異なりますが 1ボックス $4.5 ~ $5 が相場で、労働時間は早朝から始めて 7~8時間程度。
最初の内は 1時間で 2ボックス(時給 $10程度)取るのにも苦労しますが、慣れてくると 3~4ボックス(時給 $15 ~ $20程度)取れるようにもなるようです。
パッキング工場
パッキング工場は大きなファームにのみあり、各地の小さなファームで収穫されたフルーツはこれらの工場に集められ出荷までの作業が行われます。
洗浄されたフルーツをベルトコンベア上で検査してパック詰めする作業で、時給は $11 ~ $12程度。 ピッカーのようにファームを移動する必要がなく、期間中は安定した収入が期待できます。
ピッカーは体力のある男性が多い傾向にありますが、パッキングは女性の方が多い傾向にあります。
働けるビザを持っていない人でも、通常よりも少し低い時給で雇っているファームが多いのが現実ですが、就労ビザを持っていない労働は“違法”ですのでご注意ください
インタビュー
今回は 2012年の夏にピッキングに挑戦したSさんにお話を伺いました。
- ピッキングをやろうと思ったきっかけは?
- 去年ピッキングをしていた友達にお金が稼げると聞いたので。
- 2012年夏の挑戦。いつ頃行きましたか?
- 自分は6月上旬に行きました。
実際にピッキングが始まったのは6月下旬。
年によって違うのですが、今年は遅かった方だそうです。
ピッキングが始まるまではキャンプサイトでテントを張って宿泊していたので、
一日20ドルかかってしまいました。
最初にチェリーをやって、その後アップル→プルーン→洋なしと続けました。
チェリーが減った時点でパッキングもやりましたよ。結局9月末まで現地に留まっていました。
- どうやってファームを見つけましたか?
- 時期になったらオリバーやケロウナまで行けば、なんとかなります。
グレイハウンドに乗っている間からチェリーの木が見えるんです。
木があるファームを見つけたら、オーナーを探して人を雇っているかどうかを直接聞きます。
オーナーの家は豪華なので、一目で分かるんですよね(笑。
仕事が決まったら暫く働いて、採れなくなったら次々に移動しました。
南から段々と時期が来るので、北に上がることになります。
自分は徒歩や自転車を利用しましたが、車があったらなと何度も思いました。
ちなみにどのファームも定員が決まっているので、
本気でピッキングをしている人は情報を漏らしません。
町の名前は聞けても、ファームの場所は聞けなかったり。
聞き出そうとしても「あんまり聞くな」みたいな雰囲気になるので、
初めて行く方は手当たり次第ファームに行ってみると良いと思います。
ピッカーの数は大きなファームでも最盛期で 20人くらい。
100人程度いる所もありますが、ファーマーが管理しきれてないのであまり良い印象はありません。
- ファームがある所の環境は?
- 田舎の観光地です。
ホテルは沢山ありますが、安いバッパーなどはありません。
冬は人が少ないですが、夏は人口が増え、9月になると閑散とします。
遊び場は湖。飲食店も多くありませんが、マックとか A&W くらいはあります。
- 持ち物について教えてください
- 大体のものは現地調達でも良いと思います。 小さな町では個人経営の工務店のような所で調達することになりますが、 オリバーには「カナディアンタイヤ」もあります。
キャンプ用品についてですが、自分は夏用のテントを買ってしまったら朝晩が寒くて大変でした。あと移動することを考慮して薄いベッドマットを買ったら腰が痛くなった。 車があれば立派な装備も整えられるので良いですよね。ファームを巡るのも楽ですし。ちなみにピッキング専用のバケツですが、持っていなかったり、ピカピカのバケツだったりすると初心者丸出しでちょっと恥ずかしいです(笑。
- 持ち物について教えてください
- 大体のものは現地調達でも良いと思います。 小さな町では個人経営の工務店のような所で調達することになりますが、 オリバーには「カナディアンタイヤ」もあります。
キャンプ用品についてですが、自分は夏用のテントを買ってしまったら朝晩が寒くて大変でした。あと移動することを考慮して薄いベッドマットを買ったら腰が痛くなった。 車があれば立派な装備も整えられるので良いですよね。ファームを巡るのも楽ですし。ちなみにピッキング専用のバケツですが、持っていなかったり、ピカピカのバケツだったりすると初心者丸出しでちょっと恥ずかしいです(笑。
- どんな生活をしてましたか?
- 基本的にはテント生活です。稀にコンテナに住める場合もあります。車を持っている人は、車内で寝る人もいました。
朝 5時位に起きて、5時半~6時位にピッキングを開始します。 ファームによりますが、木の下にテントを張れる場合もあるので、起きたら即チェリーが摘める場合も。 ピッキングは日が上がって暑くなる 11時~2時ごろに終了します。雨の場合は中止。
あとは自由時間になります。 昼寝するも良し、遊ぶも良し。湖で元気に遊んでいる人も多かったです。
キッチンやシャワーは、ファームによってあったり無かったりです。 自分は運が良くて、行ったファームはどちらも完備でした。シャワーが無い場合は湖とか川で水浴びをしたり、 キャンプ用品のシャワーを持ち込んで使ったりしている人もいました。キッチンが無い場合はコンロを持ち込んだり、マクドナルドとかに行ったりもしていました。
- ピッキングの基本は?
- 脚立を使って指定された木のチェリーを採ります。 身体にフィットするバケツをお腹に抱えて、 そこに採ったチェリーを落としていく。 換算はバケツごとで、一バケツが5ドル位です。 バケツの8割まで入れるのが丁度良い量とされていますが(果実が潰れない為)、 ケチなファーマーの場合は「ギリギリまで入れろ」などと文句を言ってくることも。 他のピッカーと採った量は変わらなくても、 稼げる額に差が生じて悔しい思いをすることもあります。
木はファーマーに「このエリアを」と指定される場合もあれば 「勝手にやって~」という所もあります。 そのような場合はピッカー同士で「その木は俺の木だ」なんて陣地争いの喧嘩も起こります。 歩合なので、結構シビアな戦いです。
チェリーの木はそれ程高くありませんが、 きちんと剪定していないファームだと木の高さに合わせていちいち脚立を置き換えたりしなければならなくて、 これがなかなか大変な作業になります。効率も落ちますしね。
- ファーマーはどんな人たちですか?
- カナディアンかインディアンが多いように思います。
緩い人は緩いし、厳しい人は厳しい。
例えば基本的なルールとして、チェリーの“Buds”は採ってはいけません。
Buds を採っちゃうと、来年そこからは生えてこないそうです。
ファーマーにとっても死活問題なので「次やったらお前いらねえからな」と言われる。
葉っぱも採っちゃダメ。でもチェリーに絡んでいるから難しいんです。
あとは傷にうるさかったり、バケツに入っている量が少ないとなんやかんや言われます。
逆に緩い所は何も言われません。
木の管理も、きちんとしたファーマーはしていますし、
きちんとしていないファーマーは何もしていない。
管理されているかどうかはチェリーを採っていれば分かります。
- ピッカーにはどんな人、人種がいる?
- ケベック人が一番多くいます。 日本人やインディアンは数えられるくらい。
ケロウナではグアテマラ人とジャマイカ人も多くいました。 学生も多くて、夏休みを利用してお小遣い稼ぎをしにきています。
ご想像通りアンダーでやっている人もかなりいます。
毎年ピッキングに来ている人もいて、その人達が優先で埋まります。
リピーターは何かしら技能を持っているらしく、オーラが出ているんですよね。
彼らは完全にアンダーですけど(苦笑。
でもそういう人を捕まえてしまうとチェリーも採れなくなるし、
工場も稼働できなくなるので、警察は分かっていても捕まえないようです。
女性は大体工場でパッキング作業をしています。 ピッキングにも女性はいますが、やはり体力的に辛いようです。
- コツみたいなものはありましたか?
- むしろ自分が知りたいです(笑。
凄い人はチェリーをバケツに落とす音が全然違うんです。
自分たちは必死にやっても「ぽと…ぽと…ぽと…」って感じですが、
彼らは「ポタポタポタ!!」って感じです。
彼らがピックした後は、葉っぱも枝も全然落ちていないんですよ。
その結果ファームから信頼されて、良い木を与えてもらえて、
更に稼げるという好循環が生まれます。
- 実際どれ位稼げましたか?
- バケツ一つで 5ドルくらい。
超稼いでる人は、一日に 300ドルくらいいきます。
2ヶ月で 1万数千ドル。最早神がかっていますよね。
対してビギナーの平均は一日100 ~ 120ドル。
真剣に真面目に一切喋らずにやっていても上手い人には余裕で負けます。
リピーターでも下手な人は下手ですけどね(笑。
学生はタバコ休憩の多い遊び半分の人もいますが、生活がかかっている人はやっぱり違う。かなり稼ぎますね。
- やってみて楽しかったことは?
- 真剣にやれば稼げる可能性があるので、やる気が上がります。
あとは自然が好きな人には良い環境だと思います。
働いている時間は早朝からの 6時間位なので、午後からは完全にフリー。
時間があるのでゆっくり過ごせます。
- やってみて辛かったことは?
- 正直な所、1ヶ月位までは楽しいのですが、 テント生活が長くなると腰も痛みますし、熟睡できなくなってきます。
車が無いと、移動するのに厚手の上等なマットはかさばりますしね。
あとは予想以上に手が割れます。
チェリーなんて柔らかいのに、だんだん割れて痛くなってくる。
自分はテーピングにかなり助けられました。
- 注意事項などありますか?
- 貴重品管理にはくれぐれも気をつけて下さい。
テントでもコンテナでも、セキュリティはほぼ無し。
誰でも入れますから、盗難が起きても不思議はありません。