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57th Annual Grammy Awards:パフォーマンス総集編。

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57th Annual Grammy Awards:パフォーマンス総集編。

2015/2/7 更新

目次

2015年2月8日、今年も年に1度の音楽の祭典「グラミー賞」がロサンゼルスのStaples Centerで開催されました。

グラミー賞詳細:http://gotovan.com/column/view.php?id=445

グラミー賞は音楽に関するあらゆるジャンルを対象とした部門が作られていますが、オンエアされるのは「視聴率のとれる人気部門」。しかし3時間以内で収まる範囲とはいえ、ポップス、カントリー、ロック、ヒップホップ、ソウル/R&Bなど、幅広いジャンルのアーティストによる渾身のパフォーマンスを一度に見る事ができるため、お目当て以外の才能、日本では全く宣伝されないようなアーティストを目の当たりにすることもできます。特にカントリー、フォーク、ブルース系のパフォーマンスは、楽しみにしている日本人音楽ファンも多いのではないでしょうか。

以下はグラミーウォッチャー歴ウン十年の筆者による第57回グラミー賞のパフォーマンスに関する雑感となります。ホストは4年連続でLL Cool Jでした。

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※今年のグラミーを見るに当たって※
グラミーは社会情勢を反映させた緩い“裏テーマ”を設ける事があるのですが、今年のテーマは「Black Lives Matter」「DV/性犯罪の防止」でした。

①「Black Lives Matter」
昨今のアメリカと言えば、白人自警団・警官が無抵抗の黒人青少年を殺傷する事件が相次ぎ、連綿と続く人種差別、黒人差別が再び大きく表面化した年でもあります(2012年のTrayvon Martin射殺事件、Michael Brownが射殺され暴動に発展したFerguson騒乱、白人警官に首を絞められて死亡したEric Garner事件等多数)。そんな中、昨年末には映画「Selma(公民権運動等を描いた)」も発表され、オスカーへノミネートされました。歴史的に見ても黒人の権利を訴える運動が激化しているここに来て、グラミーです。音楽業界と人種問題には深く長い歴史がありますから、大方の予想通りかなりきちんと取り上げています。この空気感は演出側のみならず、アーティスト個々人を含め式全体に反映されているので、事前知識として分かっておくと良さそうです(予備知識が無いと恐らく意図を汲み取れません)。

②「DV/性犯罪の防止」
同じく、昨今のアメリカではレイプ/DV被害が表面化しています。アメリカ保健福祉省が昨年発表した全米調査報告書(National Intimate Partner and Sexual Violence Survey)によると、アメリカ人女性の19.3%、アメリカ人男性の1.7%がレイプ被害に合っているとの結果が出たのだとか。最近ではTwitterでも数々のレレイプ/DV関連のハッシュタグが作られ、著名人含む女性陣からのレイプ/DV被害の報告、そしてそれに伴う男性陣のサポートの表明がなされています。ここバンクーバーではUBC内でのレイプ事件、カナダラインでの痴漢等が大きな問題となりましたが、水面下でこれまた連綿と続いて来た男性社会の重い弊害を21世紀なって漸く社会が受け止め出したということでしょう。式典中に非常に大きな動きがありました。
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【パフォーマンス一覧】
日本のマスメディアではグラミーというと「誰が受賞したか」ばかりを取り沙汰しますが、グラミーの醍醐味はパフォーマンスにあります。受賞云々は二の次ということで、ここではパフォーマンスに特化してお届けします。

①AC/DC:"Rock or Bust""Highway to Hell"

今年のオープニングは認知症によるマルコムの脱退、フィルの殺人疑惑等、2014年はバンドにとってもファンにとっても苦悩が多かったAC/DC(グラミーでのパフォーマンスは初、アメリカのTV出演は14年振り)。今年唯一の“Narasらしくない”起用と言えますが、そこが正に“Narasらしい”所でもあります。「みんなグラミー賞は保守的とか言うけど、冒頭で大御所ロックバンド出しちゃうよ!地獄へ導いちゃうよ!」という計算が垣間見られるというか何と言うか。冒頭は新曲"Rock or Bust"、そして褪せない名曲"Highway to Hell"。ブライアンが吠え、アンガスが走ります。ドラムは復活したChris Slade。ギターにはヤング兄弟の甥っ子Stevie Youngが加入しています。ノリノリのガガ様、大騒ぎするDaveGrohlなど、粧し込んだ老若男女のセレブリティがスタンディングでAC/DCを受け止める様はある意味壮観。また、グラミーでは嘗てオープニングでWillSmithがWildWildWestを歌った時もアリーナ全員がサングラスをかけるという演出がありましたが、今回は後半Highwayで皆さんがdevil horns(赤い角)をお召しになっておりました。Katyの紫頭に似合っていましたね。単独ライブでは会場が文字通り揺れ動く事を思うと「やっぱりグラミーだな」という感は否めませんが、ステージ上はいつだって本気汁ぶっしゃー。バンクーバーには9月上陸です。
★★★★★単独ライブのが良いに決まっているで賞。
★★★★☆とにかく元気な姿が見られて良かった。

②Ariana Grande: "Just a Little Bit of Your Heart"

今やティーンのアイドル、ボーイズのファンタジー、ガールズの憧れとなった可愛い子ちゃんがAnna Kendrickの紹介で登場。AC/DCで場が燃え盛った後にピアノとストリングスを従えて非常にしっとりと歌い上げていましたが……特に悪くはないのですが、特に面白くもなかったです。しかも今回のグラミー、己の主張を押し出さない女性ボーカルソロを務めるのは彼女位であったことを考えると(KatyもBも主張の強いバラードとゴスペル)、ここはいつも通りにテンポ早めで粗の目立たない可愛いポップなステージでも良かったのではないかと思います。式の空気にも沿っていますし、力を誇示したかったのでしょうし、様々な事情と思惑もあることでしょうが、多分明日には忘れています。AI然りVoice然り、己を知って見せ方を考えるって大事ですね。因みに会場にはいつも通りニワトリ頭のお兄ちゃんの姿も。昨年度はインスタグラムに「ホモ兄貴pgr」的な事を書かれ、「あたしのお兄ちゃんて最高なのよ!!あんたよりモテるし!許さないから!」と盛大に言い返した事が話題にもなりました。兄妹揃って超美形です。
★★★★★BPM高め推奨で賞。
★☆☆☆☆次世代ぶりっこ姫。

③Tom Jones/Jessie J: "You've Lost That Lovin' Feelin'"

The Voice UKのコーチ2人がThe Righteous Brothers(Barry Mann & Cynthia Weil夫婦作曲)トリビュートで1964年のヒット曲をパフォーマンス。グラミーにおけるトリビュートには誰も何も期待していないとは言え、サブステージで見つめ合い歌い上げる2人はあまりにもカラオケチック。80年代育ちは口を揃えて「TopGun…」と言っていましたが、個人的には「スナックでシナトラを歌っちゃうおじさん&お相伴をする若手女性社員」を彷彿とさせました。浸れノスタルジア。…この後Pop SoloPerformance発表でしたが、受賞を逃したテイラーが立ち上がるのが早いこと早いこと。
※The Voice UK 2013 - Coach Performance
https://www.youtube.com/watch?v=FO8W-3owt8M
★★★★★何を着てらっしゃるので賞。
★★☆☆☆メキメキ恋して ふられた気持ち。

④Miranda Lambert "Little Red Wagon"

Dierks Bentleyの紹介で登場、カントリー界のおきゃん娘ミランダによるAudra Maeのカバー(ミランダ新譜「Platinum」収録)。旦那様が微笑ましく見守る中、勇ましいパフォーマンスで会場を沸かせました。出順も良い中で、きちんとカントリー、きちんと進化系、きちんとセクシー、きちんと万人受けするステージ。特に最近は安定した歌唱、パフォーマンスを見せていて、最早「アイドル」枠を脱出してドリー(・パートン)枠に入りそうな勢いです。ボンデージ風の黒いレザーのお衣装に少々お肉が乗っかっていましたが、昨今吹き荒れるぽっちゃり旋風に乗っていてそれはそれで非常に宜しい傾向かと(…と思ったらUSファッション誌に「スリム」って書かれていました)。 
★★★★★ぽちゃかわで賞。
★★★☆☆ここに来てようやくすっきり。

④Kanye West "Only One"

夢見るお騒がせ小僧がここに登場。サー・ポールとの共作で、急死した母&キム・カーダシアンとの間に生まれた娘さんに送ったメッセージソングをソロパフォーマンスしました。会場を暗転させ、赤いフーディ姿でサブステージに立ったカニエ。床に埋め込まれた揺らめくスポットライトの上で切々と歌い上げたのですが(下から照らされていて若干怖い)……こういったパフォーマンスをさせると流石ですね。好き嫌いはさておき才能溢れるお方です。6年振りのグラミーでのステージ、まずは大成功と言って良いのではないでしょうか。派手なパフォーマンスは後半で。
★★★★★大人の階段上がったで賞。
★★★☆☆彼らしい真摯なパフォーマンス。

⑤Madonna "Living for Love"

今夜のハイライトの1つ。昨年はMacklemore & Ryan Lewisの "Same Love" でLGBTサポート、グラミー内合同結婚式を執り行い大変に大きな話題となりましたが、今回は新譜“Rebel Heart”から“Living For Love”を初披露。楽しみにしていた方も多いことでしょう。
プレゼンターのMiley CyrusとNickiが“Our bitch!”と紹介すると、まずは大画面に闘牛士に扮した美しいマドンナが映し出され、客席からは煌めくマスクをかぶったミノタウロスが勇ましく行進。“This will be a revolution of inquiring further, of not needing to win other's approval, of not wishing you were someone else but perfectly content to be who you are. Someone unique and rare and fearless. I want to start a revolution of love.”とのナレーションが流れて幕が上がり、女王様の降臨という流れ。衣装はGivenchy、赤いホットパンツの闘牛士コスでした。 この如何にもマドンナらしい派手な演出に会場も狂喜乱舞。PV通り闘牛士とボレロを舞うステージで各方面からの評価も視聴率も良かったのですが……露出の多い衣装ということもあり、若干身体が重そうでしたね。BritのGiorgio Armaniの衣装の方が粗が目立たずお綺麗でした(Britでは階段から転がり落ちるというまさかのアクシデントはありましたが。あちらでは日本人ダンサーも出演しています)。ともあれ、Queen of Popらしいステージで良かったのではないでしょうか。
★★★★★重力は平等で賞。
★★★★☆お尻は嘘つかない。

⑥Ed Sheeran"Thinking Out Loud"ft John Mayer,Herbie Hancock,Questlove

これは非常に素晴らしいパフォーマンスでした。すっきりと「楽しい!」とはとても言い難い今回のグラミーですが、漸くグラミーの良さが存分に発揮されたステージが見られました。James Cordenの紹介でEd Sheeranの登場です。ギターにジョン、ピアノにハンコック、ドラムにクエストラブという超豪華メンバーが新進気鋭の若造の可愛らしいラブソングをがっちり支え、極上の1品に仕上げました。それぞれの持ち味をきちんと醸し出し、それぞれがさりげなく目立ち、でも主役の座は奪わないオトナ達。これまでで一番良いです。そして特筆すべきはウェリントン眼鏡(The Late Late Showでもかけていましたね)、ネイビーのスーツと蝶ネクタイ、ピンクのギターを抱えたジョンでしょう。ギタリストとしては最高峰、しかし作詞家/男としては賛否両論な彼ですが……今宵は見た目が好青年過ぎる。この格好でギター弾いてるだけならいいのに。
★★★★★ジョンがBuddy Hollyで賞。
★★★★★萌え場。

⑤Electric Light Orchestra :"Evil Woman""Mr. Blue Sky"

Ed Sheeranの紹介で登場。2014年の再結成コンサート@Hyde Parkが秒殺(実際は15分だそうです)で売り切れたELOによる楽しいステージ。Jeffrey Lynneの前でサー・ポールが立ち上がって踊る姿に ちょっと胸が熱くなりました(カメラが寄り過ぎて座ってしまっていましたが)。Mr. Blue Sky ではEdも参加し、新旧ブリティッシュ・インベージョンの共演に会場が和やかな雰囲気。ただ色々な意味でもう少し盛り上げても良かったのではないかと思います。ELOは2015年UKツアーが決定しています。
★★★★★堂々の安定感で賞。
★★★☆☆演出のおざなり感。

⑥Adam Levine,Gwen Stefani: "My Heart Is Open"

ジョンメイヤーと衣装が丸かぶりのRyan Seacrestによる紹介。…なるほど、CBS(グラミー放送局)はNBC(TheVoice放送局)を潰しに来たのですね(違います)。先ほどはThe VoiceのUK版からトムとジェシーがパフォーマンスしましたが、アダムとグウェンはアメリカ版からのお越しになります。曲はMaroon5の2014年のアルバムから。しかし控えめに言っても退屈なステージでした。個人的な意見ではありますが(しかもグウェンはソロアルバムリリースを控えているのにナンですが)、この2人はバンドを連れて来た方が魅力的ではないでしょうか。
The Voice 2014 - Gwen Stefani, Adam Levine, Pharrell Wiliams and Blake Shelton: "Hella Good"
https://www.youtube.com/watch?v=7OP6nY7ck8g
★★★★★真っ赤な口紅は世界で一番似合うで賞。
★★☆☆☆筆者のハートは半閉まり。

⑦Hozier,Annie Lennox:"Take Me to Church""I Put a Spell on You"

これも非常に素晴らしいパフォーマンス。2014年の耳タコソングですので最早それ程楽しみにもしていなかったのですが、予想を超えて良かった。まず昨年度目覚ましい活躍をしたHozier(アイルランド出身)ですが、去年話題となったVictoria’s secretやTheVoiceでのパフォーマンスよりも堂々と伸び伸びとしていました(前者では曲のテーマに存分に沿っていない場でのパフォーマンスで話題に)。そしてそれは露出過多のエンジェル達に囲まれていないからというのもあるでしょうが、この1年で重ねた経験をきちんとモノにしてきたことも大きいでしょう。立ち姿も様になってきました。背が高いので堂々としているとステージ映えします。そしてなんと言ってもアニー(スコットランド出身)!!アニーが強烈に格好良すぎて貫禄ありすぎてカリスマ過ぎて一気に血流が上がった方も多いことでしょう。一流の女優が映画を、シーンを、画面を独り占めするように、ステージを丸ごと持っていきました。当然のスタンディングオベーション。天晴でした。小娘小僧の皆様におけましてはよくお勉強して頂きたいものです。
★★★★★文句無いで賞。
★★★★★アニーが引っぱりHozierが食らいつく理想的なステージ。

⑧Pharrell Williams,Lang Lang,Hans Zimmer: "Happy"

The Weekndの紹介。Neptunes、N.E.R.Dでも活躍してきましたが、ようやくソロでもバカ売れし一般的な認知も高まったファレル、2年連続でパフォーマンスです。これは冒頭から完全にBlack Lives Matterを意識してのパフォーマンスでした。まず会場が暗転、不穏なBGMが流れる中、ベルボーイ風の短パン衣装+黄色のスニーカーという出で立ちでメインステージに登場すると、スポットライトの下で熱い語りを始めます。“It might sound crazy what I’m about to say, sunshine she’s here, you can take a break…I’m a hot air balloon that could go to space, with the air that I don’t care, because I’m happy,”(1文毎に各国語でのナレーションも流れる)。その間に黒いフーディのダンサーがファレルの周辺に集まり(Trayvon Martinを射殺されたきっかけは「フードをかぶっていたから」)、語り終了と共に薄暗い照明の中でマイナー調の寂しいHappyがスタート。客席から黄色い衣装のストリングス隊が舞台へ上がり、白い衣装のクワイアーが客席通路で踊ります。更に最初のサビ入り、皆が「Happy〜」と歌いたくなる所で、サブステージに座すLangLangによる激しくも悲しいピアノソロの挿入。その間メインステージにいるファレル御一行は“両手を挙げて静止”するポーズととりました(Ferguson事件「Hands Up Don’t Shoot」)。
……冒頭でも述べた人種差別事件の余波が渦巻く中ですからパフォーマンスに組み込んでくるアーティストが現れるのは想定の範囲内ではあるのですが、それにしても主張が強かった。会場にも楽しんでも良いのか、ノっても良いのかという戸惑いの空気が漂っていましたが、意義深いステージではありました。
★★★★★大人の短パン2人目で賞。
★★★☆☆Revolution 。

●オバマ大統領の登場●

毎年グラミーでは多かれ少なかれ社会的な主張が押し出されるのはよくあることですが(去年はGLBTサポート)、今年はなんと大統領がビデオで登場しスピーチがありました(昨年度ラテングラミーにも登場しています)。
https://www.youtube.com/watch?v=F48ejtU9Wuo
“Together we can change our culture for the better by ending violence against women and girls. Right now nearly one in five women in America has been a victim of rape or attempted rape. And more than one in four women has experienced some form of domestic violence. It’s not OK and it has to stop,” “Artists have a unique power to change minds and attitudes and get us thinking and talking about what matters. And all of us in our own lives have the power to set an example,”
これは性犯罪やDVを食い止めるためのホワイトハウスのキャンペーン"It's On Us" の一貫。この後にDVサバイバーの女性がスピーチし、Katyへのパフォーマンスに続きます。因みにスピーチが終わるや否や、Twitter上ではリリ&クリスブラウンの件が取り沙汰されていました。「クリスは何故会場にいるのか」と。本当それ。
http://itsonus.org

⑨Katy perry:"By the Grace of God"

本年度のスーパーボールが話題になったばかりのKaty。あちらではド派手なパフォーマンス、大規模なステージセット、JeremyScottの愛らしい衣装、早着替え、レニクラやミッシーとのコラボ、“左側の鮫”と、スーパーボウルならではの楽しさ満載のステージだったのですが(最高視聴率、元夫の不用な応援ツイート等も話題になりました)、打って変わってこちらグラミーではシンプルな白のドレスを纏い、大画面に踊る影を移す形で"By the Grace of God"を歌い上げました。……これは元夫であるラッセルブランドとの破綻についての歌だと言われていますが、オバマ大統領とサバイバーの方のスピーチの後ということで、ラッセルの株どん下がりです。
★★★★★Russell Brandはきっと悪いヤツなので賞。
★★★☆☆衣装とお化粧がお綺麗です。

⑩Tony BennettLady Gaga: "Cheek to Cheek"

Katharine McPheeの紹介。トニーと言えば昨今の“コラボ・アルバム”ブーム、“With Friends”ブームを作った方の1人であり、アメリカが敬愛する大御所であり、お利口Narasの大好物。一方でガガ様は2000年代最大のポップアイコンの1人。昨今はやや人気に翳りが見られるものの、ファッション、音楽性共に方向転換を図っている真っ最中です。そんな2人が昨年度リリースしたスタンダードアルバムからの1曲でしたが(best traditional pop vocal album受賞)、黄金時代の幸せなアメリカを彷彿とさせる楽しいステージでした。想定の範囲内のパフォーマンスではありましたが、ガガが少女のように可愛らしく、トニーは流石に巧い。やや”イモーショナル続き”だった会場の空気を変えるのにも最適でした。バンドはTony Bennett Quartet(ギターGreg Sargent、ピアノLee Musiker 、ベースMarshall Wood 、ドラムHarold Jones)。ガガはオスカーのSound of musicトリビュートも意外性があって面白かったです。
★★★★★むちむちがが似合う人はお得で賞。
★★★☆☆スタンダードをスタンダードに。

⑪Usher "If It's Magic"

グラミーにおけるトリビュートには誰も何も期待していな(略)。名アルバムからの名曲をアッシャーが披露。洗練されたお洒落なものではありましたが、本編でこそ如何にもスティービーらしい楽しいナンバーをやっても良かったのではないかと悶々。しかしこういう所が如何にもグラミーなので文句は言いますまい。曲も良いです、ハープも美しいです、アッシャーもしっとり歌える大人です、スティービーが聞かせた一瞬のハーモニカもいつも通りのスティービーです、でも、でも、だって。
悶々とした方はこちらをどうぞ。
Tribute to Stevie Wonder during the Grammy-Sponsered tribute, "Songs in the Key of Life – An All-Star Salute
https://www.youtube.com/watch?v=WaoF9SbCzs0
★★★★★爆発的個性で賞。
★★★☆☆MJトリビュートのあの時と同じ悶々。

⑫Eric Church "Give Me Back My Hometown"

ピッグテイルのKeith Urbanの紹介で登場、カントリー界のアウトサイダーことEric Church。トレードマークのサングラスにジーンズという出で立ちでバンドを引き連れての演奏でした。大画面には曲のテーマに合わせて世界各地の公民権運動や警察の横暴を映し出した映像が。演奏自体は グラミーの空気に飲まれてしまったのかな、という不安定なものでしたが、これは出順も悪かったと思います。CMTのパフォーマンスはロックで格好良かった。
★★★★★夜でもグラサンだけどレッドカーペットでは正装できるアウトサイダーで賞。
★☆☆☆☆飲まれている所に萌えるというのは、ある。

⑬Brandy Clark,Dwight Yoakam: "Hold My Hand"

蒼々たるメンツへの楽曲提供で昨今のカントリー界を支えて来た若手作曲家Brandy Clarkがスタジオアルバム「12 Stories」の発表でようやく表舞台に登場。サブステージでギターを爪弾きながらの演奏です。そして彼女に華を添えるのは超大御所Dwight Yoakam。こちらのデュエットは父が娘を支えるような暖かさに溢れたもので、歌の情景が会場に広がる甘く切ない素敵なステージとなりました。2人とも嬉しそうでほんわかします。
★★★★★今宵唯一のカントリーハットで賞。
★★★★☆和みのステージ。

⑭Rihanna,Kanye West,Paul McCartney: "FourFiveSeconds"

これも今回の目玉のひとつ。これがお目当てで見続けていた方も多いことでしょう。リアーナの新譜をカニエがプロデュースするということがレッドカーペットで明かされておりましたが、この曲はリリ、カニエ両者の新譜に収録されるそうです。それにしてもこのメンツ、凄いですね。一見非常に不思議なコラボに見えますが、実はさもありなんとも言えます。自己顕示欲ちゃん、目立ちたがり屋君、サー・ミーハーの三つ巴。畑も世代も異なりますが それぞれが各界を代表する才能ですから、この時代だからこそできる異種格闘技を楽しませて頂きたいものです。ステージはと言えば、白い大画面の前で黒を基調としたシックな衣装で各々が仕事をこなすというPVと同じシンプルなものでしたが、普段はお騒がせな2人も大御所の前できちんと職務を遂行しておりました。しかしサー・ポールはいつしかグラミーの常連となっておりまして、最早有難さも薄まって参りました。なにしろお元気そうで何よりです(死んでいる疑惑がまた流れていましたが、あれのソースは虚構新聞的な所です)。
★★★★★流石に格好良さは否めないで賞。
★★★★★ミーハー勝ち。

⑮Sam Smith、Mary J. Blige:"Stay with Me"

何故か2度目のテイラーによる紹介。2014年に大躍進を遂げ、主要4部門(最優秀レコード賞、最優秀アルバム賞、最優秀楽曲賞、最優秀新人賞)含む6部門にノミネートされたエンジェルボイスのサム&Queen of HipHop Soulメアリーによるデュエット(公式にリリースされています)。まずは階段状のセットに並ぶストリングス隊の合間から青白い光に照らされてサムが登場。この1年で数えきれない程歌って来たとは言え、この方は本当に綺麗に歌いますね。堂々としたものです。そしてサビの後に黒いマーメイド型のドレスをお召しのクイーンが登場、会場が沸きます。この方も舞台を我が物にする方ですが、相変わらず存在感が凄かった。サムとも本当に相性が良いです。あと “Why am I so emotional”の部分が正にメアリーという感じで良いです。サムは好感度抜群(=セルフプロデュース&マーケティング能力抜群)ということもあり、受賞も大方の予想通りの結果と言えるでしょう。今年を代表する曲でした。
★★★★★小さな事を大きく歌いま賞。
★★★★★耳タコ感を覆す良曲兼ナイス人選。

⑯Juanes:"Juntos (Together)"

Gina Rodriguezの緊張を隠しきれない紹介で登場。去年はワールドカップの勢いもあって各地でヒスパニック系がごり押しされておりましたが、やはりグラミーでもひとステージ設けましたね。しかもスペイン語で。強気です。ラテンアメリカの勢力が認めざるを得ない程に大きくなっているということでしょうが、筆者のようなテンションの低い引き蘢りアジアンにはそろそろ胸焼けが禁じ得ません。ステージそのものは盛り上がっていたようですが、例えばイグレシアス親子のような勢力はまだ感じませんでした。きっと本国ではスーパースターなのかと思います。
★★★★★スペイン語で歌った事は意義深いで賞。
★★☆☆☆情熱の撒き散らし。

●プレゼンターPrince様●

ここでAlbum of the Yearの発表。プレゼンターでプリンス様の登場です。
プレゼンターをするだけなのに会場がスタンディングでしたが、何せプリンス様ですので当たり前です。そして口を開くなり名言が出ましたので特に若者の皆様はメモして下さい。

"Albums, remember those? Albums still matter. Like books and Black lives, albums still matter. Tonight and always." 

……短い御言葉の中にどれだけの事を込めるのでしょうこの方は。

まずアルバムに関してですが、さすがトラック分け無しのアルバムをリリースした御方ですね(嘗て「Lovesexy」で9曲を1トラックとしてリリース)。そうです、アルバムは1つの世界ですから、売れそうな曲を単体でバンバン配信すれば良いってものではないのです。往年の音楽ファンが皆思っていることですが、プリンス様がグラミーで発言してこそ意味があります。Album of he year のプレゼンターとしては最高の人選でした。
そしてもう1つ、プリンス様の口からダイレクトに述べられました「Black lives(Matter)」。これは冒頭で述べたように、数々の黒人差別事件を受けて生まれたスローガンです。日本では昨今“黒塗りフェイス”でTVに出ようとした某グループや某新聞に掲載されたアパルトヘイト肯定記事が大問題となり 人種問題に関する意識の低さが話題となりましたが、アメリカでは社会的にも政治的にも黒人の地位向上に向けて人々が戦って来た歴史があります。音楽界にしても、数々のミュージシャン達が各時代で死に物狂いで戦ってきました。俯瞰で見ると以前よりは比較的平和になった世の中ですが、今一度考えるべき時に来ているようです。

……そして発表。プリンスからベックが受け取るのもなかなかシュールなのですが、そんなことより、ここでカニエがやらかしました。嘗てMTVでテイラーの受賞スピーチに乗り込み「ビヨンセがとるべきだ!」との持論を展開して炎上しまくった彼ですが、ここでまさかの“おふざけ登壇”。受賞したベックも「Need some help」と笑っていました。ネットでは真面目な皆さんに再びフルボッコにされておりましたが、今回は完全なおふざけですから会場は楽しげでしたね。特にJayZ。
※受賞関連はとことん無視しているこのコラムですが、ひとつ。ビヨンセが逃した事をグラミーも音楽もご存じないマスコミやファンの方々が色々と仰っているようですが、グラミーは人気投票ではありません。

⑰Sia: "Chandelier"

Elastic HeartのPVに出演して大きな議論となったShia LaBeoufがポエムを読み上げ、Siaの登場。2014年に漸く大躍進を遂げた超実力派の彼女、バセドウ病の発病以降は楽曲提供を中心に活動していましたが(Kylie Minogue、Beyoncé、Celine Dion、Rihannaなど)、遂に表舞台に上がらざるを得ない程に注目を集め、以来覆面歌手として活動しています。今回は自由に踊り狂う少女Maddie Zieglerが出演しバイラルセンセーションとなったChandelierのPVをステージ上で再現ししました。しかも共演はなんとSNLで有名なKristen Wiig。これには観客一同驚きだったのではないでしょうか。
パフォーマンスはというと、想像以上に“PVそのまんま”。ポップアート的には魅力的なパフォ—マンスだったのですが、個人的にはPVの方が見栄えがするなあというのが正直な所です。Maddieちゃんをどうしても出したかったのでしょうし、Kristen Wiigの登場には誰もが目を見張ったでしょうから、そういう意味では話題にもなり良かったと思いますが。SNLのパフォーマンスが素敵でした。……因みにこの曲のコレオグラファーはRyan Heffington。ArcadeFireやSigur rosなどのPVも手がけています。MaddieちゃんはプレゼンターShia LaBeoufと共に新曲Elastic Heartにも出演し大きな議論を呼びました(個人的にはアートにしか見えませんし素晴らしい完成度かと思います)。
★★★★★MaddieちゃんはPina Bausch to beで賞。
★★★★☆生なので凄いは凄いのですが。

⑱Beck,Chris Martin: "Heart Is a Drum."

Dave Grohlの紹介。6年振りのアルバムで見事Album of the year を受賞したベック。原点回帰的なアルバムで、サウンド面は父David Campbellが支えています。今回はColdplayのフロントマンとのパフォーマンスでしたが、相性が悪いわけのない2人です。派手さはありませんが、フォーク調の美しく奥深く広がる旋律が会場を包み、厳かなステージとなりました。
★★★★★Beckの復活がなによりで賞。
★★★★☆見つめるクリス、見つめないベック。

●プレゼンターJamie Foxx & Stevie Wonder●
「一瞬のハーモニカで熱狂させるなんてどうやったんだよ」「ウィンクしたのさ」という楽しい掛け合いの後、ここでもスティービーがBlackLivesMatterに言及。29年前に We are the worldに参加したことにふれ、“We must realize that we are the world and we must come together to fix all that's wrong”と語りました。Record of the year発表時はジェイミーがRay Charlesの真似をして会場を沸かせました。

⑲Beyoncé "Take My Hand, Precious Lord"

Chris Martinの元妻でありビヨンセの友人であるGwyneth Paltrowがプレゼンターで登場。“We live in the complicated time”としてBlackLivesMatterに関する呼びかけをし、「この曲はビヨンセがママに歌ってもらっていたのよ」と曲紹介。……一応補足しますと、この曲は数々のアーティストによって歌い継がれているゴスペルソングで、中でも公民権運動で使われたMahalia Jacksonのバージョンが有名です。先述した映画「Selma」の中ではLedisi Youngが歌っているため「何でビヨンセが歌うの…?」「あと何で(黒人のための)プロテストソングをGwynethが紹介してんの…?」という疑問が沸々と沸いておりましたが、ショービズですからとしか言いようがありません。勿論ビヨンセが歌う影響力は果てしなく強くはありますが。

さて、肝心のパフォーマンスですが、昨年度は超エロティックなステージで賛否両論を喰らったクイーンBですが、今年は白い美しいドレス姿で登場し、荘厳に歌い上げました。全員黒人男性で構築されたクワイアーに囲まれ中央で力強く歌う彼女は本当に美しく、人種差別や性差別と戦う現代の女神を体現しているようでした。一方のLedisi Youngは「自分がステージに立てなかったのはちょっと残念だったけど、仕方ないわ。私もいつかグラミーのステージに立てると良いのだけれど」と語りました。
※Behind the scene
https://www.youtube.com/watch?v=nVtT4jZM9GA
★★★★★Ledisi Youngはちょっと可哀相だったで賞。
★★★★★好き嫌いを超えた女神像。

⑳John Legend,Common:"Glory"

ビヨンセの紹介で登場、大トリで映画「Selma」の主題歌です。今年は式全体を通して「きっちり感」が出ていて、良くも悪くも演出が凄く頑張っているんだなあという印象が強かったのですが、式全体を通して流れる「BlackLivesMatter」に対するプロテストの空気をここで一気に回収、カタルシスへと繋げました。クワイアーとストリングス隊が並ぶ中、ジョンのピアノと歌、コモンの淡々としたシンプルなラップが響き(ファーガソン事件にも言及)、大画面にはSelmaの映像が流れます。これは日本の某新聞で最近アパルトヘイトを肯定なさった方などは映画と合わせてご覧頂くと宜しいのではないでしょうか。という主張がはみ出てしまう位、良くできたトリでした。
★★★★★但し会場とお茶の間の温度差はあることで賞。
★★★★★最後の握手の格好良さ。


【総括】
★★★☆☆
一言で述べると、意識は高く意義は深くエンタメ要素は薄い年でした。
Black Lives Matterが大きく取り上げられた点は非常に意義深く、歴史に残る回になったかとは思います。これだけ視聴率が高い番組で、しかも世界各国で放送されるものですから、アメリカ国内における人種差別を全く気にかけてこなかった人々にとっては知るきっかけ、考えるきっかけとなったのではないでしょうか(特に若年層)。一方で、Black Lives Matterに関する演出があったからでしょうか、全く関連性の無いパフォーマンスも全体的にしっとり静かなものが多く(クワイアーとストリングスがやけに多かった)、お祭り感は非常に薄かった。そしてグラミー側の演出を超えるアーティストの主張が続いた上にオバマ大統領のスピーチもあったため、悪い言い方をすれば全体的に”説教臭い”回、”イモーショナル”な回であったと言えます。
余談ですが、昨年度は大トリで御大登場前にOAが終了して大炎上したからでしょうか、今年は受賞スピーチ中に「早くはけろ」とでも言わんばかりにBGMを流して残りの尺をお知らせする戦法に出ており、なんとしてでも時間通りに進行しようとする製作陣の気迫が感じられました。アーティストはやりにくそうでしたが、演奏がぶった切られることなく終了したのは良かったです。

【バンクーバー情報】
3月15日ハンコック、3月29日Maroon 5、4月14日Eric Church、4月16日Ariana Grande、6月19日ED Sheeran、8月1日Taylor Swift、9月11日Foo Fighters、9月22日AC/DC、10月14日Madonna。

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