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【30周年記念】Bryan Adams-The Reckless Tour

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【30周年記念】Bryan Adams-The Reckless Tour

2015/1/17 更新

目次

2015年1月14日、カナダの誇るロックスターBryan Adamsがバンクーバーに戻って来ました。

1959年11月5日、カナダはオンタリオ州でイギリス系移民の両親の元に生まれたブライアン。お父様が外交官だったこともあり、幼少期はヨーロッパ各地を転々と暮らしていたそうですが、両親が離婚した12歳の頃からは こちらバンクーバーに移り住み、数々の名曲を生み出した…というのは 地元では有名なお話。90年代にはイギリスに移住し、現在もパートナーと娘達と共にイギリス在住ですが、青春時代を過ごしたバンクーバーを「ホームタウン」と呼び、度々行われる凱旋コンサートは地元民の熱狂に包まれます。

カナディアンのロックアーティストの中では世界最高の売り上げを誇る彼ですが、今回のツアーはアルバム「Reckless」の30周年を記念したもの。カナダの他にはUS、UK&EU、アフリカでのツアーが発表されています。

……たかだかアルバムの分際で「30周年」などと言われると、落ち目のアーティストによる”小銭稼ぎツアー”の口実ではないかとお思いの捻くれた方もいらっしゃるかと邪推しますが、このアルバム、ただのアルバムではございません。1984年にリリースされるや否や特大メガヒットを飛ばし、ブライアンの金字塔、80年代北米ロックの象徴、美少年ロッカーのお手本、当時の若者の眩い思い出のBGMとなった名アルバムなのです。

チャート的には、まず1stシングル「Run To You」が全米6位、続いて「Somebody」が全米11位「Heaven」が全米No.1となり、その勢いでアルバムも全米1位を獲得。1985年にはツアーの最中に「Live Aid」にも参加し、ノースバンクーバーのベースメントで"女の子よりもロックンロールに夢中だった”青年が世界的大スターの仲間入りを果たしたのでした。そして未だに毎日のようにラジオでOAされる「Summer Of '69」が全米11位「One Night Love Affair」が全米13位、ロック界の女王Tina Turnerとのデュエット「It's Only Love」が全米15位を獲得。こうして6曲とも15位以内にランクインしましたが、当時これ程の大記録を成し遂げていたのはMichael Jacksonの「Thriller」とBruce Springsteenの「Born In The USA」の2枚だけ。数字とクオリティを兼ね備え、冨と名声、そして青春ロック野郎という愛しき称号をも得ることとなったこのアルバム、30周年を祝われるに相応しい、捨て曲無しの歴史的名盤なのです。

さて、そんな「Reckless」を祝う宴ですが、今回もバンクーバーの箱はRoger's Arena
ブライアンと同世代の”死ぬまで18歳”勢に混じって、彼らのお子さんや本物の18歳が混ざっているのが微笑ましく嬉しい所です。当時の若者も今の若者も、総じてkids wanna rockということです。今回は前座が無し、待ち時間には新譜でカバーした方々の曲等が流れ、舞台上の大スクリーンにはニューバージョンのジャケ写が写されていたのですが……よく見るとこのジャケ、数分間に1度の割合で目とクチが動きます。よく見ていないと気付かないレベルなので、これから参戦なさる方は舞台を凝視していて下さい。ビール片手にお祭り騒ぎをしていた連中は見逃していました。

8時15分、ほぼ定刻に開演。ロックスターは遅刻するという80〜90年代の定説が忘れられないからでしょうか、それともカナダだからでしょうか、皆さん開演時間を過ぎても相変わらず余裕で廊下で談笑していたのですが、ノーアナウンスでの暗転と共に慌てて席に駆け込んでらっしゃいました。しかしそこは元18歳、動きが機敏ではありません。今後は余裕を持って席に着いて頂きたいものです。でないと慌てた拍子にすっ転んで周りの者にビールをぶちまけ開演直前に不穏な空気を撒き散らすことになります。筆者の列、後列のせいで全員不穏でした。ライブ中にセキュリティが登場してしまう位に不穏でした。

暗転と共にジャケ写がアップになりバンドの登場。今回も、正面に3枚スクリーンがあるだけの非常にシンプルで無骨なセット。勿論バンドはいつも通りの精鋭部隊。そしてド頭は当然のようにRecklessOne Night Love AffairShe's Only Happy When She's Dancin。掴みは上々です。Run to youではスタンド席で思い思いのエアギターが奏でられ、MCでは「Recklessのほどんどキツラノで書いたんだよ」という裏話。続いて「皆がよく知ってる曲もやるし、初めて聞く曲もやるよ!」という御言葉と共に始まったのはThe Boys Night Out。既にニューバージョンを入手した熱心なファンが踊り狂いました。Heavenでは毎度お馴染み女子と元女子の嬌声が漏れ、Kids Wanna RockではLive aidの美青年を思い出しつつスコットのギターを拝み、It's Only Loveでは演奏後のJim Vallanceとティナへの謝辞に(筆者が勝手に)涙。「ティナのバンクーバーのショウで会う機会があって、それでデュエットできたんだ、ティナ愛してるよ」だそうで、ああその時に2人が出会えていて良かった神様ありがとう。Long goneで少々場を落ち着かせ、Somebodyで合唱し、Ain't Gonna Cryで持ち上げ、遂にお待ちかねのSummer of '69。裸体に歌詞を書かれた美女がスクリーンを舞い、フロア跳ねます。既に何度もハイライト級の見せ場がありましたが、最大の盛り上がりと言っても過言ではありません……が、お分かりでしょうか。そうです、まさかのRecklessオリジナルアルバム、開始40分程で両面終了のお知らせです。怒濤とはこのコンサートの為にある言葉でしょうか。生誕祭とは言え前半で全て終わらせるとは、有り余るヒット曲の数々がなければできるワザではありません。どうなる後半。

そして始まった後半戦、Let Me Down Easy(ブライアンの筆による曲で、元WHOのRoger Daltreyが歌った。今回Recklessの30th anniversary editionに追加された)を演奏した後に「うん、これでRecklessは終わっちゃったけど、なんたって僕11枚もアルバム出してるからね!」と告げ、余裕綽々で(Everything I Do) I Do It for You。続くIf Ya Wanna Be Bad Ya Gotta Be Goodでは客席のセクシー女性に踊らせ、その後Tシャツをプレゼント(※注)!この演出、When You're Goneで(聞くに堪えない喉をお持ちの)お客さんに歌わせる定番演出よりも、大分安心です。Cuts Like a KnifeCan't Stop This Thing We Startedで爽快にかっとばし、「Norm Fisher(ベース)もノースバン出身だぜ!」と客を沸かせた後には、Please Forgive Me。いちゃつくバカップルを尻目に ありもしない純愛を思い出し、続いて当時15週間トップ40に君臨した大ヒット曲である(とは言え根っからのブライアンファンの多くは斜めに見ていた)When You're Goneをアコースティックで(今回はここではお客さんはいじらず)。最後は18 til I DieCloud #9The Only Thing That Looks Good on Me Is Youと畳み掛けて本編終了。

(※注:現地レビューに「(若者が選ばれたことにより)2015年最高に居心地の悪い観客参加の瞬間」というようなものがありましたが、アジア人の筆者にはベトナムから来たという彼女は20代にしか見えず、特に居心地が悪い気もせず。老いが早い人種の方々からするとアジア人の殆どは10代にしか見えないため”子供に艶かしく踊らせるな”ということのようですが、アジア人が自分たちよりもかなり若く見えるということをいい加減に覚えて頂きたい)

……白々しくセットリストを並べましたが、どうでしょうか このジェットコースター。このヒット曲のオンパレード、この絶妙な緩急。もうここまで来ると職人芸です。ロックンロールに酔いしれたい方も、メロウなバラード/サントラに涙したい方も、思い出に浸りたい方も、ちょっとトイレ休憩に行きたい飲み過ぎの元18歳も、ずっとブライアンに釘付けの筆者も、会場全てが納得のセットリスト、盤石の絆による安定のパフォーマンス。

今更申し上げるのもお恥ずかしい位のことではありますが、そしてMick Jaggerが齢70で「Start me up」を歌う時代ですから、”年齢を重ねて尚云々”という言い回しもしたくはないのですが、それでも敢えて申し上げれば、刻まれた皺の数だけ年を重ねたブライアンが、金髪を靡かせ、キュートな笑顔で世界中のロック野郎&ワナビー女子を虜にしていたあの頃と同じメロディを奏で、同じ言葉を放っても、やっぱり未だにきっちり格好良い所が、やっぱりとっても凄いのです。そこらの殿方であれば黒歴史と呼ぶに相応しい、ともすれば赤面してしまう歌詞の数々も、彼を通せば どれも瑞々しく輝いてしまう。例えブライアンと同世代でなくとも、本当は”あの頃のピュアな思い出”なんて無かったとしても、ジーンズを履いて太陽の眩しさに片目を瞑ってバイクに跨がる甘酸っぱい青春が、今ここで疑似体験できてしまうのです。黒歴史でもトラウマでもノスタルジーでもない、ひたすらに甘酸っぱく切ない青春が。……実際の青春なんてものは友達やら家族やら男女交際やら受験やらバイトやらに追われ苦しめられ、感情の処理の仕方も分からぬ上に自由になるお金すらも無い、大体がまあドロっとしたものですから、個人的には二度とやりたかないのですが、ブライアンにかかれば誰のどんな青春でも、全てが映画のように美しいのでした。久しく流れていなかった清い涙が流れかけました。ありがとうブライアン。

ここで一旦アンコールに入りましたが、流石はホーム。歓声がやみません。通常であれば熱狂的なファンのみが派手に騒ぎ、他は「はいはい、アンコールまで待ちますよ」と適当に拍手でもしている所ですが、アリーナもスタンドも沸きっぱなしです。寧ろスタンドでゆるりと座っていた方々までもが総立ちです。心無しか、若干早めにアンコールが始まった気もします。


アンコール1発目は新譜(ほぼカバーアルバム。ジャケは16歳になる直前のブライアンだそうで、髪を切らせたどなた様かに感謝します)「Tracks of My Years」収録のYou've Been a Friend to Me。ここではバンクーバーの皆様に呼びかけていましたが、他都市セットリストを調べると勿論やっております。そして同じく新譜からEddie CochranのC'mon Everybody。ここでバンドの面々とはお別れし、続いては同じく新譜収録でブライアンの筆による新曲She Knows Me。ブライアン節炸裂です。なんででしょう、全く大した事を言っていないただの王道ラブソングなのに……!!ストレートに響いてキュン死にしそうです。あんなこと言われたら世の中の女子の8割は膝から落ちることでしょう。 続いてStraight from the Heart 。あんなこと言われたら世の中の女子の以下省略。そしてAll for Love。それぞれが立派に年を重ね、今や大昔の3倍位チケット代をとっている音楽界の三銃士の面々が共演を果たした神曲ですが(しかもRodはサンタナ、Stingはポールサイモンとのジョイントだったので、スタンドですら$200はした記憶。そう考えるとブライアンの価格設定は物凄く良心的です)、3人ともが今も元気にツアーをしている事に感謝して感激します。

そして締めはやっぱりこの曲、Vancouver Bound(Alberta Boundのバンクーバーバージョン)。前回2012年のライブではドラムの前にお母様を座らせて歌い客席から幸せな溜息が零れたこの曲。今回は1人で淡々と奏でましたが、バンクーバーの皆様は多いに盛り上がり別れを惜しんでいました。

2時間半、絶妙な緩急で心も身体も踊らされたライブ。1984年から実に30年もの時が流れていたとは信じられない位、当時と変わらぬ世界を見せ付けてくれました。声が衰えているという事もなく、パフォーマンスが手抜きになるということもなく、シンプルで無骨で華やかで美しいロックンロールがそこに。メガヒットをかっ飛ばし一躍シンデレラ・ロックンローラーとなった後には、ヒットの出ない苦しい時代、バラード/サントラ量産を批判された辛い時代もありました。でも今にして思えば、だってメガヒット過ぎたんだもん。だって名曲できちゃうんだもん。だってナチュラルボーンキュートなんだもん!!という話です。見る度に思いますが、バラードを奏でようが アイドルとデュエットしようが、ちょっとへんてこなPVを作ろうが 娘さんができようが、根底に流れるロック魂が消える事は無いのです。バンドの演奏も素晴らしいものでしたし、相変わらずスコットとの仲良しっぷりが羨ましくも微笑ましく萌えちぎれ、詰まる所、男も女も元18歳も現18歳も、みんな彼が大好きなんだな、ということです。It's only love, that's all!

【Band】
Bryan Adams - lead vocals, rhythm guitar
Keith Scott - lead guitar, backing vocals
Mickey Curry - drums
Norm Fisher - bass
Gary Breit - keyboards

【写真集:WOUNDED The Legacy Of War】
実は写真家としても活動しているブライアン。嘗ては英国の厳しいミリタリースクールから追い出されたこともある彼ですが、2014年にはイラクやアフガニスタンで傷ついた若い英国兵士達を撮影した「WOUNDED The Legacy Of War」を発売し各方面から好評を博しました。

http://bryanadamsphotography.com/books/

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